Essence of Europe
                  フランス・ロワール訪問記
   -Nantes(ナント)とAngers(アンジェ)-案内


これは Essence of Europe(=EoE)ホームページ に連なるフランス・ロワール訪問記です。
最初にロワールに至る迄のお話、そして実際の訪問を辿ります。
他の項では訪問記と街案内が分かれているものもありますが、今回は訪問記の中で
滞在取材調査した街案内もする形としました。
滞在した2つの街はいつもながらのGoogle Mapと対になった案内がありますので、
旅行、滞在される方はご参考にしてください。


目次

【ロワール訪問まで】

【Paris(パリ)行き便の思い出】


【Paris(パリ)から新幹線で】


【Nantes(ナント)-スマートでユニークな海岸都市】

         1.Watching Point    2.街の情報

【Angers(アンジェ)-中世の王都】

         1.Watching Point    2.街の情報




Nantes4

ナントのブルターニュ公爵城


Angers1

Angers(アンジェ)城


【ロワール訪問まで】

2013年春から開始したヨーロッパワイン販売でドイツ、イタリアに続きスペインの
ワイン迄導入後約半年、いよいよフランスに挑戦しようかと調べ始めました。
フランスは最近イタリアの激しい追い上げを受けていますが、世界に冠たるワイン
の生産国かつ輸出国であり、又様々な文化、ビジネス上のリーダーであることには
変わりありません。
特にボルドー、ブルゴーニュと言う有名2大産地はその特徴的なワインにより日本
でも特別な存在として君臨しています。
それ故に扱う業者も大手や強力な専門家などがひしめき、とても最初から近寄り難
い所もあって避けてきました。しかし一応ワイン販売の基本形が回り始めたので、
ボルドー、ブルゴーニュは置いておいてもどこか面白そうな、そして勿論ワインが
おいしそうな所は無いかと探索を始めました。

ワイン産地ではシャンパーニュ、アルザスはすばらしいワインを産するのは間違い
ありませんが、やや限られた商品領域なので導入フェーズでバラエティも欲しいと
考えている対象としてはやや適さないかな?と考えました。
そうしますと他はJura(ジュラ)、Savoie(サヴォワ)、Rhone(ローヌ)あたりの
山と渓谷系、或いは南に展開するProvaence(プロヴァンス)、Languedoc(ラング
ドック)、そして南西地方(ガスコーニュ地方)、ロワール地方が対象となります。

さて、このあたりのぼんやりした対象が頭にあって、2014年3月初め、幕張メッセで
開催されたFOODEXに参加しました。これは飲料を含む食品業界の巨大イベントで、
日本国内は勿論、海外からも数多くの参加者があります。ワインも出展があります
ので参考にしたいのと、とにかく色々なものがあって面白いのです。
このFOODEXは業界関係者しか入れません、一般の人は駄目です。と言っても、厳し
いチェックがある訳ではなく、当日入場券を買う所で名刺を出して『私はこういう
企業で食品小売をやっています』とか『こういうお店で料理を作っています』など
の自己申請だけなので名刺さえ調達すれば入れます。予約とかは一切無く、当日券
だけがあって5,000円です。勿論出展社からの招待など特別顧客は別です。

規模が大きいのでそれなりに見て回るだけでも1日では足りません。しかし5,000
円は安くはありませんし、時間も限られているので(私もそうですが)多くの人は
1日で何とか回る、それには対象を絞って来場していることでしょう。
筆者もヨーロッパのワインと主対象を決めて回りました。しかし、副題としてもし
面白そうな食品があれば調べてみようとは考えて。

こうして当日ヨーロッパのワインを中心に回りました。次のフランス候補もテーマ
の一つですが、それ以外にも現在扱っているワインと同種の展示品をチェックした
りとか、本当にいくら時間があっても足りない感じです。

そうして、やや疲れてフランスのコーナーを歩いていた時、ふと呼び止められたの
が蜂蜜コーナーでした。丁度家内が『おいしい蜂蜜がないものか?』と言っていた
ので足を止めて試食してみました。フランスの野原で養蜂して採った蜜だそうで、
これは中々おいしい!と言うことで資料を一応頂きました、そして名刺を提出。

FOODEX終了後、この蜂蜜屋さんからメールが届きました。取り扱いを検討ください
との主旨です。面白い食品とは思いますが、売れるものかどうかわかりませんので
扱うとしても最初から大量には行かない、ワインの荷物の端に積んでトライアルす
る程度ですね。そう返したら、それでもいいです、実際この近くにも良いワインの
産地があるからとの返事。場所を確認したらナントの近くの街、良いワイン産地と
はロワールの事でした。これも何かの縁、対象の一つロワールに迫ってみるか、と
ここで方向を決めました。

地元ならワインの良い生産者などを紹介してもらえると有難い、とのリクエストに
この蜂蜜屋さんは積極的に動いてくれました。幾つかのワイナリや組合からメール
が届き始めます。こちらもWEBでロワールのワイナリをチェックし始めます。
このチェックはワイナリ自体のHPで作っている商品その他の情報を調べるのは勿論
ですが、日本に既に輸出をしているか等もポイントです。
色々な商品を揃えていて選択余地があり、かつ日本にはまだ輸出していないがその
力は十分ある、など条件を絞ります。従って山のようにあるワイナリですが、選定
に残るのはかなり絞られてきます。

この動きと同時に旅程を決めて、連絡をもらったワイナリ、こちらから連絡してア
ポを取ったワイナリ含め、合計7軒のワイナリの訪問日時が決まったのが出発の3
日前でした。ところで最初にナントに向かうので、蜂蜜屋さんにはここの滞在中に
郊外にある養蜂園を訪問しようと思い、日程決定後最後に連絡を取りました。
ところが『実はその期間は中国に出張に行く』とかで居ません。いやあ、色々骨折
りしてもらったのに申し訳無いと言いましたら『いや同じロワールの産物が日本に
輸出されるのは嬉しいので問題ありません、又次の機会に話しましょう』との言葉
をもらい、親切な後押しをもらってロワール訪問となりました。

【Paris(パリ)行き便の思い出】

日本出発は2014年5月31日土曜、羽田からJALで10:30発パリへ。約9カ月ぶりの海外
です。この便は確か1カ月程度前、割引販売最後の日に駆け込みで買いました。
数年前には羽田から欧州への便は無かったので、パリ行きに羽田から乗るのは初め
てです。そう言えば・・・パリ行きJALには思い出があります。

2009年の初春、前職のハイテク会社時代ですが、海外出張が入りました。
2008から2009年ー憶えておられますか?−そう2008年9月にリーマンブラザーズの
破綻が起こり、怒濤の如く世紀の不況へと転げ落ちた日々でした。この時、世界に
冠たる自動車メーカーT社ではいわゆる近地の出張ー私鉄で数百円で移動できる場
所への出張ーさえ原則禁止となり、余程の必要性が無いと認められないとの噂が
・・・これが本当か俄かに信じ難い話ですがそういう雰囲気だったのは確かです。

そういう時期の海外出張ですから、止むを得ずとは言え、如何にコストを減らすか
を懸命に考えました。行き先はフランクフルトなのですが、普通に往復するとお昼
の便で当日夕方会社に着き、翌日仕事をして、最も早くてその夜の便で戻っても翌
日の夕方に着きます。すると出発日と到着日は日本でも欧州でも仕事ができないの
で3日を通して1日だけの仕事となります。

ところがパリ行きは夜中に出ますので、出発日は夜迄日本で仕事ができます。パリ
到着は現地午前4時、朝イチでフランクフルトに飛べばここでも1日たっぷり仕事
ができます。帰りは同じですが、3日のうち2日を潰していたのが1日だけを潰せ
ば済む形に改善でき、実はホテルも2泊から1泊へと削減、これを採用しました。

そして成田へ11時頃かけつけました。がらがらの空港は必ずしも時間が遅いだけの
せいではありません。本当にビジネス客がいないのです。出国検査所迄来ると僅に
列ができていましたが(一人か二人なので列では無いですが)、それはこの時期、
卒業旅行を楽しもうと言う女子大生達でした。

私がこの出国検査所へ入った時、JALの係員が寄ってきて、『どうぞこちらへ』と
乗務員が通る入り口を開けて案内してくれました。いやあ、一人待てばすぐ通れる
のにこんなサービスをしなくても、と思いましたが、いや、やはり係員の人も何か
些細でもできる努力をしたいと探している、そういう意味では筆者が必死で考えた
パリ経由での旅程と同じだなあと思い、何だかその係員に仲間意識ができて『あり
がとう』と言ったのを覚えています。今思うと実にくだらない話かもしれませんが
その時と言うのはそういう形で過ぎ去るもの。親の世代から戦時中は・・・と色々
聞かされても自分ではそういう妙な形には入るまいと思ったり決意しても、『その
時』と言う力は恐ろしいものだと悟りました。

その機内もやはりがらがら、Cabin Attendantがやはり気を使ってくれて、3人掛
けの席を通しで割り当ててくれました。当時のビジネス席は立派だが、座席仕切り
があるため横に通すことができませんでした。ところがエコノミーは座席仕切りが
撥ね上げられるのでこういう事ができる、そして完全に横になって寝られるものだ
と初めて気がつきました。時間も日本の深夜なのでうまくぐっすり眠れます。
到着はパリの朝4時ですが、日本だと昼前、バイオリズム的には問題ありません。
リーマンショックの影響が薄れた後もこのパリ経由フル働き旅程は有名になって、
『とんでもない(辛い)ルートを開拓してくれたものだ』と言われた事もあります
が、実際には上述のように体のリズムは自然で楽なルートです。

長くなりましたがJALパリ行き便の思い出、5年前の厳しかった日々を思い起こし
つつ羽田を後にしました。そう言えばJALはこの間に会社が行き詰まって再生法
の適用となり、苦闘の末に再起した5年間でもありました。


【Paris(パリ)から新幹線で】

パリ到着は午後、頑張れば最初の目的地ナント迄その日に行けてしまうかと思った
のですが、初めてのルートでもあり、用心してパリに一泊、翌日曜にナントへ移動
としました。故にパリの街の新幹線出発駅モンパルナスに宿を予約したのです。

モンパルナス迄の移動はバスにしました。このCDG(シャルルドゴール)空港から
モンパルナスへの交通は旅行者が多く使うので、ネットで検索をかけると幾つかの
コメントが見つかります。結論から言えばバスのルートは待ち時間が45分、実際に
乗ってから到着迄が1時間強でした。
MPN1

モンパルナス駅正面



MPN2

バス発着場は横手にあります


予約したホテルはモンパルナス駅のすぐ傍で
バス停留所からも近く、部屋もまずまずの広さ、雰囲気もパリ風で良かったのです
が、唯一の問題点(になり得る点)はエレベータが無いことです。

Hotel1

モンパルナス駅前路地のホテル


筆者の部屋は最上の5階、チェックインでオーナー(らしき人)にエレベータは無
いと言われた時はちょっと愕然としました。しかし、鞄を持った出入りは1回ずつ
だけ、まあ帰りにワインでも詰め込むことも考えて鞄をがらがらにして来たのも正
解でした。頑張って運んでしまえば後は快適なホテルライフ。ネットも問題無くつ
ながりました。

Hotel2

駅前ホテルの部屋、小窓もパリらしい


部屋に落ち着いて一休み後、早速モンパルナス駅へ出かけ明日の新幹線切符を予約
します。モンパルナスは各地への列車が発着するパリのメインの駅ですが、日本の
東京や新宿などに比べればコンパクトであまり迷う事はありません。

MPN3

モンパルナス駅の構内


切符売場も標札に従って行くとすぐにわかります。さすが大観光地の駅ですから、
英語で十分に通じます。翌日朝のナント行き切符を問題無く入手できました。

MPN4

切符売場はこの標札をたどればOK


MPN5

切符売場のホール


切符も入手したので夕食です。ホテルの主人に聞くと『この近くにはどんな店でも
あるよ。寿司もあるからどうか?』ときました。何も日本から着いた途端に寿司を
食べることもありません。適当に探すよ、とぶらぶら歩きますと、確かにアジアの
各国、日本、インド、中華はじめ雑多なレストランがひしめいており、そして勿論
パリ風カフェもどっさり。カフェでそこそこの夕食を取りました。

さて翌日朝はいよいよ新幹線へ。切符をよく見ると22号車とかになっています。
新幹線の車両がそんなに長い訳は無いよね?日本の新幹線だと山形行きと八戸行き
が東京駅では一緒になっていて、その代り1-6号車と11-16とか飛んだ番号になって
いる、或いはグリーン車が間に挟まって番号が飛ぶ、そんな感じかな?と思いつつ
ホームに出ると、端から順に1,2,3.....と続きます。
結局ホームをどんどん歩いても番号が飛んでいる車両は無く、延々と22号車迄・・
しかし、よく見ると一両の長さが結構短いのです。日本の2/3程度でしょうか。
そうすると日本での16両は24となり、大体辻褄は合います。

MPN6

長々と停まり出発を待つ新幹線


日曜朝故か車内はすいていてゆったりとできました。見落としたのか、発見できな
かったのか、新幹線の路線、ルートが今一つわかりませんでした。
そもそもTGVと言いますが、正確には高速鉄道のことで、日本のように新幹線専用
の線路を走るのではなく、ある区間は新幹線速度(300Km程度)で走れるレール設備
がある、と言うのが正確なようです。これはドイツでも同じ事情でした。
それで、ツールと言う街からロワール川沿いにナントへ走るのではないかと言う、
勝手な好都合想像に反し、新幹線設備の整ったル・マン経由で走ったようで、外の
景色はずっと田園風景です。気がつくとアンジェに到着。漸くここからは時々川が
顔を出します。

MPN7

新幹線車内



MPN8

アンジェを過ぎてから見え始めたロワール川


ナント迄はモンパルナスから約3時間でしょうか、大体予定どおりに到着です。
駅前をトラムが走っています。これでシャトーの横を通過して3駅、Commerceの駅が
中心付近です。
宿泊はこのCommerceから歩いてすぐのデザインホテルにしました。
デザインホテルなるものに宿泊したのは実は初めてです。その建物からして一寸変
わった外装ですが、窓が壁に開けられた穴のような・・・

Nantes1

宿泊したナントのデザインホテル

中からは下記の写真のように上下に分かれているので、一方だけ窓を開けて調整で
きるとも言えますが逆に全体を通した大きな光が取れず、一長一短です。
それよりも遮蔽カーテンが服のホックのように隅や上下に付いたボタンで開け閉め
するのですが、結構やり難く、ボタンの留める力が弱くて部分開けが難しい。
写真のように片隅ボタンだけ開けるか、或いは全部開けるしかないような選択で、
決して快適ではありません。

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ホテル室内、窓も凝った造りだが使い難い・・・

他にもモノ入れがガラス製で見た目はすっきりですが、出し入れがどういう訳か、
(デザインホテル故か?)横からしかできず、手を横から入れるので奥(中央)の
部分が大変出し入れし難い。又、最初のうちは部屋がやや暗いこともあって透明な
ガラスが見えず、どうしても前から取ろうとして手をぶつけると言う危険も。

Nantes3

ガラス製モノ入れは横から出し入れ・・・

全体として悪いホテルではありませんが、細かい所で逆にデザインホテル故の不便
さの方を感じてしまいました。他のデザインホテルを知らないので何とも言えませ
んが、使い勝手を第一にした上で装飾的な面をスマート或いは奇麗なものにしても
らわないと、ちょっと今後は泊まろうと言う気がしません。

さて一応ホテルに落ち着いて2日間はナントの街歩きと方々見て食べて歩きです。
次節はこれに基づいたナントの街の紹介です。

その後、引き続き訪問した街 Angers(アンジェ) も紹介します。


【Nantes(ナント)-スマートでユニークな海岸都市】

ナントは日本ではカトリックとプロテスタントが和解したナントの勅令の言葉によ
って知られています。この勅令は両派の和解を宣言したもので、個人の信仰の自由
を歴史上初めて宣言したためにその名を刻みました。
何故ナントで宣言したかと言うと、ナントのブルターニュ公爵がカトリック派で最
後迄頑張った末にフランス王と和解したためとあります。
元々この地は10世紀以降ブルターニュ公国として独立国家を保ってきたので、そう
安易にはフランス国王に迎合しなかったのでしょう。フランス併合が1547年、勅令
が1598年で半世紀しか経っていません。
ブルターニュとして生きた歴史は今でもナントの人々の心に刻まれている気がしま
す。実はブルターニュ公国がフランスに州として組み込まれた時、ブルターニュ公
アンリ2世がフランス王に即位しています。これは言い換えればブルターニュがフ
ランスを代表する王国として参入したとも言えます。どうもナント、ブルターニュ
の人々の深層にはそういう誇りがあるように感じます。

もう一つのナントの特徴は海岸都市と言うことでしょう。
つまり海外に開けています。元々の住民もイングランドから来たブルトン人ですし
、ここに攻め込んだヴァイキング(ノルマン人)も北欧から襲来しました。これを
撥ね退けて樹立したブルターニュ公国も、その続きのブルターニュ州も絶えず英国
とフランスの影響を受け続けました。
そして18世紀に奴隷船の母港として三角貿易に参加、近代が始まった19世紀には工
業都市として発展します。このあたりの展開においてもイギリス、フランス双方と
の関係をフル活用して経済的な発展を享受しました。

こういう歴史故か、この街にはパリなどとは違ったややクールで独立心の高い一種
独特の雰囲気もあるようです。街の規模もフランス第六と適正であり、多くの経験
を経て育ってきたスマートでユニークな魅力ある街と言えます。
現在フランスで最も住み易い都市との評価を得ているのも頷けます。
それでは次から案内に入ります。

1.Watching Point                                                                         地図を見る

Watching Point、街の注目点です。先ずは先頭写真にもあるブルターニュ公爵城
があらゆる意味で中心と言えるでしょう。

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ブルターニュ公爵城

観光案内所もこの城の入り口近くにありますので、大まかな情報をここで得てから
街を探索されるのが良いでしょう。

ブルターニュ公爵城の中を、或いは街を臨む庭を見学した後、必見は併設されてい
る歴史博物館ではないかと思います。

Nantes5

ミュージアム入り口

ミュージアムは上の ナントの概要紹介 で書いたように、ブルターニュ公国とそれに
前後する歴史を愛着と誇りを持って紹介しています。
海洋都市としての変遷や、近代工業の中心地としてフランスやヨーロッパの発展を
牽引した歴史などが展示されています。

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ブルターニュ公爵城の模型


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やや昔の船関係展示


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近代船舶と技術の展示

イギリスとの繋がりを何度も述べましたが、ナント発祥のお菓子LU(リュー)ビス
ケッともイギリスのハイティー文化を継いで作られたものです。
このLUビスケットはフランスでは大ブランドらしく、最近になって有名な食品メー
カーDANONに買収された際には他のDANON傘下のお菓子がLUにブランド替えされたと
の話があります。どのスーパーにも売っているカジュアルなビスケットですが、日
本ではあまり知られていないので手軽なお土産にもなります。

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ナント発祥ビスケットLUへの愛着ある展示



次に街のもう一つのシンボルとしてサンピエール大聖堂があります。これは各種の
解説ではゴシック様式で1434年に建設が始まり、457年の歳月を要し1891年に完成
したとあります。何故こんなにかかったかと言うとブルターニュ公国のジャン5世
(ブルターニュ公)が公国一の大聖堂の建築を望んだためだそうです。
確かに大きいですが、大きさだけだと欧州各地には一杯大きな大聖堂があります。
この大聖堂の価値は大きさと同時にゴシック様式で白亜の見事な存在感を表現して
いる所でしょうか?(建築価値については素人なのでわかりませんが)。
翼廊にある、ブルターニュ公フランソワ2世とその公妃マルグリット・ド・フォアの
墓は装飾が見事なルネサンス様式との事なので建築に興味と造詣ある方はじっくり
と見られると良いでしょう。
尚、名称は正式にはサンピエール・サンポール大聖堂です。何故二人が並べて呼ば
れているのかはわかりません。

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街から見たサンピエール・サンポール大聖堂


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正面から見たサンピエール・サンポール大聖堂



次のWatching PointはLe Lieu Uniqueです。ここは芸術文化を中心にしたいわゆる
複合施設Nationnal Centerです。街の中心地Commerce近くに、Tram1号線をお城と
反対側に渡った位置にあります。何よりこの場所を見つけるにはそのシンボルであ
るLU TOWER、青で彩られた独特の塔が目印になります。
そう、ここはビスケット会社LUの工場を再利用したものです。
様々な地元の文化芸術催しも行われていますが、言語含め俄かにそれに参加するの
は正直厳しいかもしれません。しかし、カフェや書籍販売など色々な施設も併設さ
れていますので、フランス文化の雰囲気を味わいつつ休みを取る場所として楽しめ
そうです。

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LU Towerは遠くからも目印に


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Le LU Uniqueの入り口


これ迄はお城、大聖堂、文化芸術施設を紹介しました。次はこの街の持つもう一つ
の側面、工業技術関係です。
特に題に海岸都市としたように、海に開けた地理条件は技術面でも港湾、船舶関係
に特色を残しています。
これがまとまっている地域がLes Machines de l'ileで、機械の展示島と言うような
意味でしょうか?TRAM1番線が駅からCommerce,Mediathequeへ向かい、これらの駅を
通過すると左手にロワール川が現れ、川を挟んで対岸に位置するのがナント島です。
これがLes Machines de l'ileであり、嘗ての造船ドックの跡など船舶全盛期の名残
を感じられます。Chantiers Navalsの駅を降りてすぐ目の前のアンヌ・ド・ブルター
ニュ橋を渡ると島です。

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アンヌ・ド・ブルターニュ橋からナント島を望む


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往時を偲ばせるドックの跡


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活躍した迫力ある巨大クレーン


中でも有名なのが謂わば海の生き物のメリーゴーラウンドで、動きを含めて精巧に
仕上げられた生き物操り人形を操りながら回転を楽しめる施設です。操り人形と言
うのは機械仕掛けのマリオネットと表現するのが当たっており、つまり木を使った
り、動く仕掛けも操り人形のようなメカニカルなもので、金属と電子装置を駆使し
た現代ロボットとは一線を画します。こういう生き物ロボットをアートとして作る
集団La Machine(ラ・マシン)に依るものです。
これはLE CARROUSEL DES MONDES MARINS、英語でThe Marine Worlds Carouselと
呼ばれています。

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海の世界のメリーゴーラウンド


もう一つ絶大な人気を誇るのが巨大な象のロボットで、多くの人を載せて動く様は
中々圧巻です。筆者が行った時は時期が悪かったのか動かしていませんでしたが、
WEBの紹介動画などで見ると大人も子供も楽しめそうなユニークな乗り物です。

Nantes18

水しぶきもサービス、巨大な象の乗りもの(HP)


さて、機械仕掛けの島の他にもう1か所、印象的な機械の展示場所があります。
これはMusee de l'Imprimerie(印刷博物館)です。場所はTram1番線Mediatheque駅
のすぐ傍です。言うまでも無く、グーテンベルクの発明した印刷技術がヨーロッパ
の現代文明への雄飛を支えた根幹技術ですが、これは発明国ドイツのみならず、こ
こフランスにおいても地道で精巧な印刷技術展開が行われていた事がわかります。
中々面白いので『写真を撮ってもよいか?』と聞いたら拒否されました。
往時の技術展示なので今更極秘にする時代でも無かろうに・・・と思いましたが、
ここはナントのパスでフリーに入れますし、フランスやブルターニュの嘗ての熱い
技術開発時代を見て感じるに適した博物館です。

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印刷博物館


さあ最後は広場と通り、そしてショッピング街です。
ナントの街の中心には二つの広場Place Royale(ロワイヤル広場)とPlace Graslin
(グララン広場)があります。ロワイヤル広場はどちらかと言うとカジュアルで賑
やかな感じ、グララン広場は劇場や伝統あるカフェなどが周りにあって、落ち着い
て風格ある感じです。この二つの広場を結ぶ通りがCrebillon(クレビヨン通り)
です。街のメインストリートの一つで、代表的なショッピング街でもあります。

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ロワイヤル広場


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グララン広場


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二つの広場を結ぶクレビヨン通り


このクレビヨン通りから少し入った形になりますが、屋内のショッピングモールで
あるPassage Pommeraye(パッサージュ・ポムレー)があります。
このモールは19世紀から続く歴史と独特の雰囲気を醸し出すフランスらしいモール
であり、フランス歴史文化財だそうです。

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パッサージュ・ポムレー入り口


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パッサージュ・ポムレーの美しいアーケード


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パッサージュ・ポムレー独特の中庭世界



2.街の情報                                                                         地図を見る

代表的な観光情報は ツーリズムサイト で、その 英語版 もあります。
Information(観光案内所)は地図にも示しましたがブルターニュ公爵城の近くに
ありますので、ここで先ず基本情報を把握されるのがお奨めです。
それからCity CardであるNantes Passは17Euroですが、Tram移動や一部博物館
などが無料になります。
大体の施設は上記サイト英文のTO DISCOVER -->> TO SEE/TO DOを手繰ると
TOP 10が掲載されており、そこから1 Clickで各施設のHPに飛べます。
前節のWatching Pointで紹介した中では印刷博物館がこの中に入っていないので、
次の 印刷博物館のHP を紹介しておきます。英語版が見つからないのでGoogle
翻訳に頼るしかない?のが辛いですが。

もう一つ、レストラン情報で有用なサイトが ナントのテーブル です。
これは写真もきれいに紹介されて説明も丁寧で要を得ており、レストラン選びには
大変使い易いサイトだと思います。紹介したサイトは英文版です。
これらのサイトと一般の案内本でかなりの情報が尽くされていますが、筆者が実際
歩いて得た情報を街歩きについては上記 1.Watching Point で紹介しました。
更にこの街のカフェ・レストランについては レストランの紹介 にて、又ショップに
ついては ショップの紹介 の順で説明しています。
どうぞそれぞれのリンク先に飛んでじっくりとお読みください。

引き続き訪ねたロワール川中流の都市Angers(アンジェ)の紹介です。


【Angers(アンジェ)-中世の王都】


                                                                                          地図を見る

ロワール川に沿って大西洋に出るナント迄にある大きな街がTours(トゥール)とこ
こAngers(アンジェ)です。先にも書きましたが、ツールが商業中心なのに対し、ア
ンジェはよりワイナリ製造者に近い街と感じられたためにここに宿を取りました。
ツールには行かなかったので比較はできませんが、ワイナリ、製造者に近い街と言う
イメージは当たっており、多くのワイナリをこの街を起点に訪問できました。

今はワインとロワール観光の拠点都市の一つとして活動する地方の中堅都市ですが、
この街は特に中世において、ナントと同じくイングランド、フランスを含めた諸侯
による群雄割拠の中心地であり、アンジェ帝国と呼ばれる、スコットランドに迄広
がる一大勢力圏の帝都でした。アンジェ帝国はブルターニュ公国を影響下に置いた
が支配はしなかったとか。このあたりのややこしい関係は日本の戦国時代と類似し
ており、分裂かつ係争の封建社会は全世界的に共通の現象のようです。

しかし帝都を経験しただけに、この街発の店や商品は今も活躍しています。
街案内にこれらも登場しますのでお楽しみください。

街歩きの時の有名所がWatching Point(WP)です。アンジェの観光案内は日本ではまだ
少ないようで、筆者が実際に歩いて見たスケッチを紹介します。

そして一般の観光案内サイトや街の交通情報、恒例の レストラン および ショップ
案内を含めて 2.街の情報 の項にまとめました。
それでは以下のRigaの街案内をお楽しみください。


1.Watching Point(WP)                                                                         地図を見る

Angersの街はメーヌ川が中心部を貫いていますが、この川が大河ロワールに合流
する地点でもあります。メーヌ川沿いに、これを見下せる位置にアンジェ城があり
ますが、このお城がとにかくWatchig Point、そして街の観光中心です。
上にも書きましたが、とにかくこのお城は中世の複雑な、フランスに止まらず現在
の英国やアイルランドまでも巻き込んだ抗争の中心の一つでしたから、大変政治的
な場所だったに違いありません。歴史経緯が比較的まとまっているのはロワール県
案内サイト のように思えます。
とにかく中世王様の収集した品で有名なのがタペストリーです。特に『ヨハネの
黙示録』のタペストリは中世最大のものとして有名で一見の価値があります。

Angers1

Angers(アンジェ)城


Angers2

アンジェ城から見る、傍を流れるメーヌ川


中に本や土産などを売るお店もありますので ショップ の項にも詳細を書きました。

観光案内所もこの城の入り口からすぐ傍にあります。ここについては恰好のお土産
の売店としても有用なので ショップ の項にも書きました。コインロッカーもあり、
早めに場所を確認して、地図その他の地元情報を入手されるのが有効です。
アンジェ城と観光案内所はアンジェ駅からも比較的近い場所にあります。

さてアンジェ城のすぐ横を走る大通りがRoi Rene(ロワ・ルネ)通りです。この通
りを川と反対の方へ上るとトラムが走る大通りMarechal Foch(マレシャル・フォッ
シュ)通りに出ます。この交差点のすぐ南はもう駅ですが、駅と反対方向、北東に
トラムの線を進むとFoch-Maison-Bleue駅となり、トラムはここから川の方向へと
左折して行きます。次の駅がRalliementで、街の中心広場です。
ここには長い歴史を誇るLe Grand Theatreがあります。1865年に一度火災で焼失し
た後、現在の建物は1871年から続き、各種の演劇公演の中心になっています。

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アンジェ城横を走るRoi Rene(ロワ・ルネ)通り


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トラムが走るMarechal Foch(マレシャル・フォッシュ)通り


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トラムRalliement駅前Le Grand Theatre


このマレシャル・フォッシュ通りからRalliement駅を通るトラム線、およびお城の
横のロワ・ルネ通りとメーヌ川に囲まれた地域に主要なWPが集中しています。

お城と並ぶ街の象徴がCathedrale Saint Maurice、サンモーリス大聖堂です。
建築モニュメントとしてはアンジューゴシック様式の代表であり、内部のアーチ型
天井や12-15世紀のステンドグラスの収集に価値があるようです。
もう一つこの大聖堂を他の多くのフランス或いはヨーロッパの街のものと異なる趣
にしているのがその立地でしょう。大聖堂は小高い丘の上になっており、その正面
玄関からメーヌ川にかけて急な階段が続き、メーヌ川向こうの街が見渡せる位置に
あります。聳える聖堂とそこから続く急な坂は眺めと同時に大聖堂をより一層迫力
ある建築として表現しているように思えます。

Angers5

小高い丘の上に聳えるサンモーリス大聖堂


Angers6

サンモーリス大聖堂からメーヌ川と対岸を展望


この大聖堂は表正面がメーヌ川を望みますが、裏に当たる場所にWPがあります。
これは『アダムの家』で、中世の木組み建築がそのまま残されているものです。
下から見るとどうもやや傾いている感じもあり、地元の人は上に行く程床面積が大
きい造りになっているなどと解説してくれました。このため随分不安定ですが、逆
にそれが中世的な雰囲気を強調している趣もあります。
現在は中が商業施設になっており、洒落たお土産などを売っています。

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アダムの家


大聖堂からメーヌ川に下る坂とアンジェ城に挟まれた一角でも嘗てを偲ばせる住宅
を見ることができます。古い石造りの家が並びますが、その屋根に特徴があります。
この石や屋根に使う建材はメーヌ、ロワール川で採取されたものですが、特に屋根
に使われているのはスレートと呼ばれる建材です。スレートは天然の産物で、特定
方向にだけ剥離性を持つため、この性質を利用して丈夫ながら曲げ等の加工に優れ
た建材として開発されました。
アンジェのスレート天然の恵みと伝統の技に支えられて現在でも世界的に有名で、
様々な有名建築お屋根に適用されています。
このようなスレート屋根の家をこの界隈で見られる訳です。
この優れたスレートを模したお菓子もあってles Quernons d’Ardoise’と呼ばれ、
アンジェ名産品のようです。ナッツやキャラメルで固めたスタッフィングをブルー
のチョコレートでコーティングしてあり、まるでスレートタイルに見えます。
観光案内所をはじめ方々で見かけます。

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川の恵み、石とスレートを駆使した家並み


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les Quernons d’Ardoise’はスレートタイルを模した菓子


さて大聖堂とお城の間で、川から離れた、マレシャル・フォッシュ通りに近い区域
にも幾つか建築、美術のWPが固まっています。
一つはマレシャル・フォッシュ通りからサントーバン通りに入り、その通りの先に
あるタワーでTOUR SAINT AUBINです。これは街で最古の聖オーバン修道院に付属し
たBell Tower、上部にベルが備えられ、時間や修道院関係の合図を告げるのに使わ
れたのでしょう。
現在はタワーは絵画の展示に、修道院は行政府の管理関係に使用されているようで
す。

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SAINT AUBINタワー

このすぐ傍にMusee des BEAUX-ARTS(美術博物館)があります。14世紀から現代迄
の絵画や彫刻など美術品を収集展示しています。詳しい内容は 英文サイト が閲覧で
きますので参考にしてください。

この博物館からToussaint(トゥサン)通りに出て少し下った所に入口があるのが
Galerie David D'Angers(デイヴィッド・ダンジェ・ギャラリー)です。
これは Pierre-Jean David(1788-1856)、通称David d’Angersとして知られる芸術
家の展示館です。建物は嘗ての修道院を利用。著名人の彫像はじめ彫刻類が中々の
迫力です。
詳しい内容はやはりその 英文サイト で読めます。

博物館、美術館はその 一覧サイト があり、上記のサイトもそこから辿れます。
他の博物館は少し郊外のものが多いようですがこの一覧サイトから調べられます。

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Toussaint通りにあるGalerie David D'Angersの入り口


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Galerie David D'Angersの展示


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文豪Balzacの彫像


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文豪Victor Hugoの彫像


さて最後にご案内するWPは川のクルーズです。
メーヌ、そして合流する主要河川のロワールと広く豊かな川に恵まれたこの地域で
は水辺の楽しみも一杯あるようです。滞在の仕方によっては車を使った移動を含め
水辺を目一杯楽しめるエリアでしょう。
旅行者にとっては街中から船で移動したり、クルージングで川の上を楽しむのが手
軽で快い体験になります。
これらは案内サイトの On the Water項 で説明されています。
但し英文説明がうまく出ないケースがあり、又クルーズなどのコースがかなり複雑
なようなので、観光案内所や船着き場にて情報入手されるのが良さそうです。
船着き場(の一つ)はアンジェ城の川を挟んだ対岸真向かいにあります。

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アンジェ城から正面対岸の船着き場を見る


2.街の情報                                                                         地図を見る
Angersの街の情報をまとめました。
先ず最も有用なサイトと思われるのは英文版もあるこの 案内サイト です。
本ガイドの前節 1.Watching Point でも何度も引用しました。
特に大雑把に観光情報を把握するには "SEE IT GO IT" で見どころリストなどを閲覧
してみると良いでしょう。

もう一つ、有用そうなサイトangers.frを見つけました。しかし、これにはどうも
英文版が無く、全てフランス語のようです。と言うことでフランス語ができない筆
者などはとても使いこなせませんが、フランス語を読める方はより生の情報を得ら
れるかもしれません。

アンジェに止まらず、ロワール県と言って良いでしょうか、Val de Loire全体の
情報が日本語で得られるサイト france-acces もあります。サイト名だけからは
ロワールと連想できませんが首都アンジェを含むロワール情報です。
ロワール全体を動き回る予定の時には日本語でもあり便利そうです。

最後に鉄道を使って移動される方のために 鉄道検索サイト(英文) を紹介します。
これはフランス国有鉄道sncfのサイトで、出発、到着の駅と条件などを入れると検
索して結果を示してくれます。前後の列車なども見易く、使い易いサイトです。
因みに筆者も今回はscnfを活用しましたが、パリからロワール、そしてロワール内
での鉄道移動は遅れなど大きな問題も無く快適でした。

アンジェの街を筆者が実際に歩いて確認したお店やレストランを含む調査の結果を
専用の Mymap と共に レストランの紹介 、および ショップの紹介 としてまとめました
のでご参考にして頂ければ幸いです。

又、この旅にて訪問し、輸入することになったロワールのワインについてはHP上の
ワインショップ にて紹介していますので同時にお楽しみください。







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